チョコレートが高すぎる!? 価格高騰の裏側と、これからのチョコレートとの付き合い方

チョコレート、びっくりするほど高くなりましたよね
最近スーパーでチョコレートを手に取って、思わず二度見してしまったことはありませんか? 50gのチョコレートが200円、250円を超えていて、「え、こんなに高かったっけ?」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。
実は今、チョコレート業界全体が大きな価格高騰の波に飲まれているんです。小売価格だけでなく、製造に使う業務用のチョコレートも例外ではありません。チョコレート菓子を作る立場として、この価格高騰は本当に切実な問題になっています。

私がチョコレートを扱う仕事を始めた頃、1キロのクーベルチュールチョコレートは1,700円くらいでした。それが今では3,000円を切ることはほとんどなく、だいたい3,100円から3,200円で購入しています。倍近くになってしまったんですよね。
今日は、なぜこれほどまでにチョコレートの価格が上がってしまったのか、そして今後の見通しはどうなのか、チョコレートを愛する皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
カカオ豆の価格が4倍に!? 「カカオショック」の実態
チョコレート価格高騰の主な原因は、原料であるカカオ豆の価格上昇です。ニュースでも耳にされたことがあるかもしれませんが、西アフリカでのカカオ豆の不作が大きく報道されています。
日本に流通しているチョコレートの9割は、ガーナやコートジボワールなど西アフリカで収穫されたカカオ豆を使用しています。確かにこの地域では、カカオの木がウイルス病にかかってしまい、多くの木を切り倒さざるを得なくなりました。
💡 ポイント
カカオの木は植えてから実がなるまで約7年かかります。つまり、今から7年程度は西アフリカでの減産が続くと予測されているのです。
ただ、ここで不思議なことがあります。カカオ豆は西アフリカだけで生産されているわけではありません。南米やメキシコなど、赤道付近のいわゆる「カカオベルト」と呼ばれる地域でも栽培されています。実際に南米では増産が続いており、世界全体のカカオ豆生産量を見ると、わずか4%しか減っていないんです。
それなのに、カカオ豆の価格は4倍に跳ね上がりました。これが「カカオショック」と呼ばれる現象です。
価格高騰の真犯人は「先物取引」
では、なぜたった4%の減産で価格が4倍になったのでしょうか。
カカオショックが始まる前、カカオ豆の国際取引価格は1キロあたり約2.5ドルでした。それが2024年に入ってから急激に上昇し始め、2025年1月には10ドルを超えたのです。現在は少し落ち着いて7.6ドル程度になっていますが、それでも3年前の約3倍という高値が続いています。
💡 ポイント
実はカカオ豆の価格は、農家さんが自由に決められるものではありません。ニューヨークの先物取引市場で決定される国際取引価格に従って売買されているのです。
つまり、投資家たちが「アフリカでカカオ豆が不作だから、今後7年は供給が少ないだろう」と予測し、価格を一気に釣り上げたというのが、多くの専門家が指摘している理由なんです。実際の生産量の変化以上に、市場の思惑が価格を大きく動かしてしまったということですね。

正直なところ、豆の生産量はそこまで減っていないのにこんなに価格が上がるのはおかしいと思います。でも、先物取引で価格が決まっている以上、私たち現場の人間にはどうすることもできないのが現実なんです。
業界全体で進む工夫と努力

このチョコレート価格の高騰を受けて、お菓子業界では様々な工夫が行われています。
一つは、チョコレートの使用量を減らしたレシピの開発です。例えばボンボンショコラを作る際、中身をチョコレート以外のものにして、お菓子一個あたりのチョコレート使用量を抑える試みが広がっています。価格が跳ね上がらないように、皆さん本当に工夫されているんです。
また、産地の多様化も進んでいます。従来は西アフリカ産のカカオ豆に依存していた日本市場ですが、最近では気候変動の影響もあり、アジア地域でのカカオ栽培が国家プロジェクトとして進められています。ベトナムなどアジア産のカカオ豆を使ったチョコレートも増えてきました。

私自身も、アジアのチョコレートを応援したいという思いから、ベトナム産のカカオ豆を使ったチョコレートと、従来のアフリカ産の豆を混合して使うことが多くなりました。少しでも産地を支援できればという気持ちです。
長期的な解決策:農家さんのサポートが鍵
短期的な対策だけでなく、長期的な視点での取り組みも始まっています。
一つは、カカオ農園の収量を増やす試みです。現在ガーナでは1ヘクタールあたり約400キロのカカオ豆が収穫されていますが、理論上は1ヘクタールあたり5トンまで収穫できる可能性があると言われています。農家さんへの教育支援や設備投資によって、収穫量を増やす余地は十分にあるんです。
さらに重要なのが、カカオ農家さんの生活を支えることです。実はカカオ農家を継続することは、非常に難しい現実があります。
💡 ポイント
カカオ豆の価格はニューヨークの先物取引所で決まるため、農家さんたちの知らないところで価格が乱高下します。去年の4倍になったり、4分の1になったりと、生活の見通しが立たないのです。
そのため、カカオ栽培をやめてコーヒーやドリアンなど他の作物に転換してしまう農家さんが後を絶ちません。今後、安定してカカオ豆を供給し続けてもらうためには、農家さんへの継続的なサポートが欠かせないんです。
今後の価格はどうなる?
残念ながら、カカオ豆の価格が急激に下がる見通しは立っていません。先物取引で価格が決められている以上、生産量が回復したとしても、すぐに価格が落ち着くとは限らないのが現実です。
しばらくの間は、このチョコレートの高騰が続くと考えておいた方が良いでしょう。実際、現在のボンボンショコラの平均価格は一粒あたり430円程度で、デパートではさらに高価格のものも珍しくありません。
チョコレート好きさんへの提案:手作りという選択肢

では、チョコレート好きの私たちはどうすればいいのでしょうか。
一つの答えは、自分でチョコレートを作れるようになることです。実はチョコレート作りは、自宅のキッチンでも十分に楽しめるお菓子なんです。ロスが少なく、材料さえあれば自分好みのボンボンショコラを作ることができます。
手作りなら、好きな組み合わせで、自分だけのオリジナルレシピを作ることもできますし、何より購入するよりもコストを抑えることができます。チョコレートにまみれたい方、心ゆくまでチョコレートを楽しみたい方には、本当におすすめの方法です。

私がお伝えしているジュエリーショコラティエ養成講座では、ガナッシュの配合の黄金比や、オリジナルレシピの作り方などもお教えしています。恩師である広島大学名誉教授の佐藤先生(明治のガルボの研究開発に携わられた油脂のスペシャリスト!)による特別講演会なども予定していますよ。
これから気温が下がってくると、チョコレート作りに最適な季節が訪れます。今年はぜひ、手作りチョコレートに挑戦してみてはいかがでしょうか。
まとめ:チョコレートと上手に付き合っていくために
今回のチョコレート価格高騰についてまとめると、以下のようになります。
現在のチョコレート価格高騰は、カカオ豆の実際の生産量よりも、先物取引市場での投資家の動きが大きく影響しています。そのため、しばらくの間は高値が続くと予想されます。
でも、悲観することはありません。アジアでの新しいカカオ栽培の動きや、チョコレートの使用量を工夫したレシピの開発、そして何より私たちが手作りすることで、チョコレートを楽しみ続けることができます。
価格は上がってしまいましたが、チョコレートの美味しさや魅力は変わりません。これからも美味しいチョコレートを楽しみながら、カカオ農家さんのことも少し思い浮かべながら、大切に味わっていきたいですね。
そして、チョコレート作りに興味を持たれた方は、ぜひ自分で作る楽しさも体験してみてください。自分で作ったボンボンショコラの美味しさは、格別ですよ。

ちなみに、これからハロウィンに向けて、血のようなベリーソースがあふれ出る脳みそチョコレートと、黒い何かがあふれ出るミイラのチョコレートを作る予定です。ホラーなチョコレート作り、楽しいんですよ!(笑)
良い秋の夜長を、美味しいチョコレートと共にお過ごしください。