10月に入り、名古屋もようやく朝夕の気温が下がってきて、少しずつチョコレート作りがしやすい季節になってきましたね。

突然ですが、皆さんはチョコレートのモールド型、正しく洗えていますか?

「普通に食器用洗剤とスポンジで洗って、拭いて終わり」という方、実はそれでは不十分なんです。せっかく丁寧にテンパリングをとって作っても、型が綺麗に洗えていないと、チョコレートの表面が曇ってしまう原因になってしまいます。




今日は、ご家庭でもできるチョコレートモールドの正しい洗い方と、ピカピカに磨く方法をお伝えします。この方法をマスターすれば、宝石のようにツヤツヤ輝くボンボンショコラが作れるようになりますよ。

チョコレートモールドって、どこで買えるの?


まず、チョコレートモールドについて簡単にご説明しますね。モールドというのは、ポリカーボネートという硬いプラスチック製の型のことです。昔は製菓学校や専門店でしか手に入りませんでしたが、ここ2、3年で状況が変わりました。

お菓子作りをする方ならご存知のコッタさんでも、1000円台から購入できるようになり、気軽に手に入るようになったんです。もちろん、より品質の良いものはもう少しお値段がしますが、ご家庭で楽しむには十分なものが手に入るようになっています。

なぜ型の洗い方がそんなに重要なの?




💡 ポイント

型が綺麗に洗えていないと、残った油分が次に作るチョコレートの曇りの原因になります。特にカカオバターの油分は非常に強力で、普通の洗い方では完全に落とすことができないんです。



ボンボンショコラの美しいツヤは、正しいテンパリングと綺麗な型があって初めて実現します。どちらか一方が欠けても、思うような仕上がりにはなりません。だからこそ、型のお手入れはとても重要なんですね。

食洗機は使ってもいいの?


「食洗機で洗っても大丈夫ですか?」というご質問をよくいただくのですが、答えは「YES」です。

食洗機用の洗剤は、アルカリが入っていてかなりパワフル。手で使ったら手がカッサカサになってしまうくらい、油分の除去能力が高いんです。しかも、ポリカーボネートは大体耐熱120度ありますので、食洗機に入れても全く問題ありません。

食洗機をお持ちの方は、ぜひ活用してください。ただ、食洗機がない方のために、今日は手洗いの方法を詳しくお伝えしていきますね。

絶対にやってはいけない!スポンジの使い方


さて、ここからが本題です。皆さん、普通の食器用スポンジで洗っていませんか?実は、それが一番やってはいけないことなんです。

💡 ポイント

スポンジの外側の硬い部分で洗うと、モールドの内側に小さな傷がたくさん入ってしまいます。その傷の形でチョコレートが固まるため、次に作ったチョコレートの表面に細かい傷が転写されてしまうんです。



傷が入ったチョコレートは、どうしてもピカピカのツヤが出ません。宝石のようなボンボンショコラを目指すなら、この小傷は絶対に避けなければならないポイントなんです。

プロが実践している洗い方の手順


では、具体的にどうやって洗えばいいのでしょうか。比較的ご家庭でも揃いやすい材料を使って、手も荒れにくい方法をご紹介します。

まず、用意するのは100均で売っている普通のスポンジです。5個で100円、つまり1個20円くらいのもので十分。このスポンジの外側の硬い部分を、ハサミでカットしてください。

そうすると中から、フニャフニャの柔らかいウレタンスポンジが出てきます。この中身だけを使って洗うんです。濡らすと本当にフニャフニャになって、型を傷つける心配がありません。

このスポンジに普通の食器用洗剤をつけて泡立て、モールドを優しく洗います。その後、水でしっかりすすいで乾かしましょう。これで小傷をつけずに洗うことができます。

ここで終わりじゃない!油分を完全に落とす仕上げ


「洗って乾かせば終わり」と思われるかもしれませんが、実はここからが重要なんです。食器用洗剤だけでは、カカオバターの油分は完全には落ちていません。

カカオバターの油って本当に強力で、アルカリの入っている洗剤で洗わないと綺麗にならないんですよ。ベタベタと残ってしまうんです。



ここで登場するのが「無水エタノール」です。近所の薬局で500mlが1800円くらいで購入できます。この無水エタノールを化粧用のコットンに染み込ませて、型を一個一個拭いていくんです。

💡 ポイント

無水エタノールで磨くときは、必ず手袋をしましょう。脱脂効果が非常に強いため、直接手につけると油分が取れて手が真っ白になってしまいます。



コットンに適量の無水エタノールを染み込ませて、型の一つ一つの窪みを丁寧に拭いていきます。つるんとした型なら指で磨けますが、細かい溝がある型の場合は、竹串の先にコットンを巻きつけて磨くという方法もあります。

パストリーゼじゃダメなの?


「無水エタノールの代わりにパストリーゼを使ってもいいですか?」というご質問もよくいただきます。

パストリーゼはお菓子作りをする方なら多くの方が持っているアイテムですよね。でも、パストリーゼはアルコール濃度が77%なので、残りの23%は水なんです。

型の表面に水が残ってしまうと、それが蒸発するのを待たなければいけませんし、水滴の跡がついてしまうこともあります。それをまた拭く必要が出てきて、二度手間、三度手間になってしまうんですね。

ですから、型を磨くのであれば、ぜひ無水エタノールを使うことをおすすめします。

業務用の現場での工夫


バレンタインの時期になると、目を閉じながらひたすら型を磨くんですよ。キュッキュッキュッキュッと、一個ずつ。まさに修行ですね。今年のバレンタインでは、単発レッスンで120〜150箱分、500粒以上のチョコレートを作ったので、すべての型を磨いていました。



チョコレート作りをしている人は、みんな「型磨きがしんどい」と言います。それくらい手間のかかる作業なんです。だから、型抜きのボンボンショコラは少し減りつつあるのかもしれませんね。

量産する場合は、ドリルのような回転する工具の先にコットンを巻きつけて磨く方法を使っている海外のショコラティエもいるようです。工夫次第で効率化できる部分もあるかもしれません。

型を洗わない派もいる?


実は、私の師匠の中には、型を洗わないという外国人のシェフもいました。「型からチョコレートを出したということは、中に入っていたチョコレートがすべての汚れをくっつけて出てきているから、型を洗わなくていいんだよ」という考え方です。

ただし、日本人のシェフはほぼ全員、型を洗っていると思います。やはり、日本人の繊細な感覚では、型を洗ってピカピカにしておきたいという気持ちが強いんでしょうね。

まとめ:ピカピカのボンボンショコラは、型のお手入れから




いかがでしたか?チョコレートモールドの正しい洗い方をまとめると、次のようになります。

家庭で洗う場合は、スポンジの外側を切って柔らかい中身だけを使い、食器用洗剤で優しく洗います。その後、無水エタノールを染み込ませたコットンで一つ一つ丁寧に拭いていく。食洗機がある方は、ぜひ活用してください。

型をピカピカにして、正しくテンパリングをとれば、宝石のように美しいツヤツヤのボンボンショコラが作れるようになります。少し手間はかかりますが、仕上がりの美しさは格別ですよ。

これからチョコレート作りに最適な季節がやってきます。ぜひこの方法を試して、美しいボンボンショコラ作りに挑戦してみてくださいね。

皆さんの秋の夜長が、素敵なチョコレート作りの時間になりますように。

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